唐津暮らし〜ここちよい生活のはじまり

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【唐津人】島をまるごとデザイン

島をまるごとデザイン

松尾 聡子さん

株式会社バーズ・プランニング代表取締役、松尾聡子さん。唐津市呼子出身、福岡を拠点に呼子町と2カ所に事務所をかまえ、グラフィックデザインから化粧品のプロデュースまで幅広く活動しています。現在唐津の女性起業家として、自社の商品(椿油を使った基礎化粧品)がファッション雑誌に掲載されたり、日本各地の優れた美容健康商材が表彰されるジャパンメイドビューティーアワード優秀賞、九州ビューティーアワード最優秀賞と数々の輝かしい賞を受賞。佐賀県内にとどまらず全国へと活躍の幅を広げています。しかしそこに至るまでの道のりは決して平坦ではなく、ある小さな島の人達と地元商工会青年部の協力なしでは実現出来ませんでした。今回私は、松尾さんと島の人達がどのように心を通わせ、商品作りをするきっかけになったかお話をうかがいました。

日本書記にも記されるほど椿の島として有名な加唐島

彼女のデザイン人生の始まりは高校卒業後まで遡ります。高校卒業後彼女は先ず愛知県のデザイン事務所に就職。最初は新社会人として与えられた仕事を懸命にこなしていましたが、自分らしさを求め3年で退職。次に彼女は、直接現場を見ながら企画・デザイン・プロモーションも出来る、福岡の企業に再就職。しかし5年後倒産、そのあとすぐ今の会社(株)バーズ・プランニングをその時の仲間と起業しましたが、仕事に対する方向性の違いからそれぞれ別々の道を歩み始めることになります。紆余曲折を繰り返してきた彼女が最後に辿り着いたのは、1人で企画から運営全ての業務をやる事でした。

 

 

様々な経験を積み重ねデザイナーとして地元に戻ってきた彼女は、「もっとこうしたらこの商品は良くなるのに、商品の魅力が上手く伝わっていない。」と今までは分からなかった地元の問題点を再発見。デザイナーの視点から何か地元に還元できる事はないか思いを巡らしていると、自分なりに貢献出来ることはないかと考えるようになります。そこで先ず原料集めから取りかかりますが、コスメに限らず食品や雑貨に至るまでジャンルを問わず、模索を繰り返す中で悪戦苦闘の日々を過ごします。そんなある時、父から加唐島(かからしま)の椿油の素材が良いことを耳にします。昔からこの地区では馴染みがあり、日本書記にも記されるほど椿の島として有名な加唐島。以前から椿油の販売は扱っていましたが、素材の良さが生かされていない。ここに目をつけた彼女は、「これを使った商品開発をしたら良いのでは。」と思い付きます。そこで呼子から出ている加唐島行きの定期船「かから丸」に20分程揺られ、佐賀県最北端人口135名ほどの小さな島「加唐島」に向かいました。

 

 

島に着くとすぐに住民説明を行い思いの丈をぶつけましたが、島の人達の反応は、「島には若い人はほとんどおらず後継者もいない。そんな現状で新しい事にチャレンジするのを不安に思っており難しい。自分達には出来ない。」最初誰もが皆消極的でした。しかし彼女はその後何度も島を訪れ、自分も島の人達に溶け込むように、島の人達が何を必要としているか、自分たちに出来ることは何かアイデアをひねりだします。しかし状況は一向に進行せず平行線のまま。もうダメかと思い、地元に帰り青年部の仲間達に自分と島の人達の事を話ました。

今では、毎年青年部の恒例行事になっている椿園の草刈り

上場地区青年部の仲間達と椿園の草刈りをしている様子
(今では、毎年青年部の恒例行事になっている。)

すると皆は、「じゃあ先ず島の人達が出来ないことを俺たちがやってみることから始めてみよう。」この一言をきっかけに彼女の運命の歯車が回り始めます。早速青年部と県内外からボランティアスタッフを募り、草刈りから収穫までの作業をしにみんなで島に向かいました。作業の様子を見ていた区長の徳村敏勇樹(とくむらとしゆき)さんは、「こんなに島が若者で賑やかなのは何年ぶりかな。」ととても嬉しそうに笑っていたそうです。

青年部と彼女の地道な努力により加唐島に活気が出た

TBKナチュラルスキンローションと市長からの感謝状を手に微笑むお三方
(写真右から徳村区長、松尾さん、宗さん)

そうした青年部と彼女の地道な努力により、閉鎖的だった島の人達の心は少しずつ開いていったのです。いよいよそこから島の人達と、二人三脚による本格的な商品開発が始まります。彼女は、分けて貰った椿油を使い試行錯誤を繰り返し、丸1年かけTSUBAKI SAVON(椿油を使った無添加の洗顔石鹸)を完成させました。

 

1人の若い女性の強い思いは、島の人達の意識までも変えたのです。きっと何度も挫けそうになった事でしょう。しかしその都度、「このプロジェクトは絶対島の人達の為になる。だからどんな事があっても説得してみせる。」こうした彼女の熱い思いは、この椿の花の様に実を結んだのです。

松尾さんの熱い思いは、椿の花の様に実を結びました

そこで私は自分も加唐島に行き、実際島の人達とお話をしたいと思い、松尾さんにお願いして取材させて貰うことにしました。

2人がかりで一粒ずつ良質な種を手作業で選別
島の人達は1組3人ずつ12人で交代しながら作業に取り掛かっている

取材当日定期船の発着所には、我々が到着すると、まず区長さんが椿油を抽出している現場に車で連れて行ってくれ、作業中の様子を見学。そこには2人がかりで一粒ずつ良質な種を手作業で選別しながら、抽出作業をしている様子が見られました。これら気の遠くなりそうな作業を、島の人達は1組3人ずつ12人で交代しながら行っています。彼らは松尾さんと気さくに話します。「松尾さん、俺たち頑張って椿油作るから、いっぱい売って来てよ。」それに対し松尾さんは、「そうね!宣伝するのが私の仕事だから大丈夫。」と答えます。最初島に上陸した時、今の状況を彼女は想像出来たでしょうか?あんなに変化を恐れていた島の人達が、今では自分達の商品に誇りを持ちその思いを彼女に託しています。

 

 

彼女がこの島で成し遂げた事は、島の人達全体の意識の底上げと、新たな活力を生み出した事でした。松尾さんの行動は、決して自分の気持ちを押し付けるのではなく、常に彼らの気持ちに寄り添い、焦らず少しずつ歩み寄った結果ではないかと思いました。きっと最初島の人達は外から来た松尾さんに対し、警戒心を持っていたのではないかと思います。しかし彼女は今あるものを変えるのではなく、進化させることで島の人達の生活を潤すことにつなげたのです。それは彼女が理想としていた、「地域をまるごとデザインしたい。町と人を豊かにしたい。」その想いが実現したのです。

松尾さんは「地域をまるごとデザインしたい。町と人を豊かにしたい。」という思いが実現しました

まるで本当の親子のように満開の椿園の前で笑顔いっぱいの徳村区長と松尾さん

最後に彼女は、「もっともっと唐津の良さを知って欲しい。唐津にはこんな良いものがあると全国的に広めたい。」彼女の戦いは、まだまだ始まったばかりです。「自分が出来るのは地域の皆さんのため全国どこでもPRする事だけ。その為ならどこでも行くし何でもやる。」今日もどこかで島の人達の想いを胸に松尾さんは全国を飛び回っています。「次はどんな商品開発をしよう?何がいいかな?」更なる野望を心に秘めながら、今日も松尾さんの底抜けに明るい笑い声がどこからか聞こえてくる気がします。

【Information】

株式会社バーズ・プランニング
TEL 0955-82-1600
インスタグラム:https://instagram.com/birdsplanning?igshid=1ncsgnredssbe

唐津移住コラムニスト:AYAKOさん

コラムニスト:AYAKO

3児の母。埼玉県出身 結婚を機に唐津に移住、現在は子育てをしながら、佐賀新聞の地域リポーターとして、唐津で頑張っている団体や小学生、移住者を中心に、月1で記事を担当。そのほか、小学校の放課後遊びのボランティアスタッフや、読み聞かせ等、地域の子供達の育成に取り組む。唐津出身ではない、他県から来た自分だからこそ見える、新たな唐津の魅力を、発信していきたいと思います。

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